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更新日:2011年12月14日
基調講演 中 山 泰 京丹後市長
皆さんこんにちは。ご紹介いただきました京丹後市長の中山でございます。
今日はどうぞ、よろしくお願いいたします。
多重債務の問題、また窓口の整備についてということでございまして、私どもは、この4月から設置をさせていただいて、専任の担当者を配置して、弁護士の皆さんと一緒になってお取り組みをさせていただいているわけですが、今日は、設置に至った首長の立場としての思い、思いの一端を披露してほしいというお話でございまして、我々のところではこの4月に立ち上げて、まだ見よう見まねでさせていただいているところですので、役不足かと思いますけども、ご参考にならないことも多々あると思いますし、何か参考にしてほしいという思いで、今日は来させていただきました。
その一端をご披露、ご報告させていただきたいと思っています。
![]() 基調講演 |
まず、我々のところは、京都府の最北端、丹後半島、日本海側に面するところで、丹後半島の6つの町が3年半前に合併して新しい市としてスタートしました。 面積こそ500km2と広いわけですが、人口6万3千人の小さなまちでございます。産業的にも、丹後ちりめんという伝統産業があるわけですが、長期の低迷をしておりまして、ここ1・2年は、特に大手の消費関係の会社のご倒産もありまして、今、未曾有の危機的な状況にございます。 また、田舎町ですので、一定、建設業等の公共事業業種も産業の中で一定シェアを占めていますが、大幅な受注減の中で、市全体としてはとても経済的に厳しい状況に、今、立っているようなことでございます。 これは何とか、産業・経済の再生ということで懸命に努力をする訳ですが、とても悲しくてつらいことに、自殺される方が急増しているという状況でございまして、平成16年・17年、14人・15人、この数ですら人口一人当たり全国的な平均と比べて多いのですが、18年は22人、19年の今年は9月末までの段階で28人の方が自殺でお亡くなりになられているという、とてもつらい状況がございます。 |
そのような中で、昨年は、国のほうで「自殺対策基本法」も制定をされ、そのような動きの中で、我々も、昨年秋に市内の16の関係の機関の皆さんに集まっていただき、“自殺ゼロ”を目指していこうと「自殺ゼロ実現推進協議会」を立ち上げて、取り組みを始めさせていただいたところでございます。
この「多重債務相談・支援室」の設置については、その一環としてこの4月に立ち上げさせていただいたわけでございます。
そのような意味で、まず、多重債務の問題、室の設置についての経緯等に触れる前に、自殺対策を当市の中でどのように位置づけているのかということについて、少しご報告させていただきたいと思います。
我々のまちの大きな方向として掲げておりますのが、市民の皆さんお一人おひとりをかけがえのないものとして大切にしていく、そしてお互い支えあって、助けあって、生かされあって、喜びや笑顔の多い“まほろば”のような、そんなともに生きる共生のまちづくりといったことを大きく掲げさせていただいております。
支えあい、生かしあい、助けあいということでございますけども、このことを大きく掲げさせていただいた理由が1、2ありまして、一つは行政的な事情ですけども、我々のところは田舎ですので、歳入構造を4割ぐらい交付税に依存しています。
とても財政指数の低い、交付税に依存する率が高い状況にございまして、今、国のほうで交付税の改革も進められておられますので、依存しているものが多い分だけ非常につらい度合いも厳しくなるという状況でございます。
他方で、歳出のほうも、地方の方が負担をせざるをえないような、増やさざるをえないような状況が続いて、お医者さんを確保するための経費もそうですし、私どものところは民間機関に光ファイバを敷設していただけませんので、ほっておいたら遅れてしまうということで、これも都会にない事情ですけども、自前で多額のお金をかけて敷設しないといけない等々、歳出のほうはとても必要なことの中で、財政的な当然余裕がなくなってきています。
他方で、産業振興をはじめ、あるいは福祉の問題をはじめ、やらないといけないことは山積みの中で、今までのように行政が主導しながら財政的な手立てでもって課題の解決をしていくということは、そうとう限界がきているようなことで、他の地方もそういう状況が似たり寄ったりのところがある訳ですが、そのような中で、技術的なことではないのですが、住民の皆さんと一緒になって連携、協働しながらまちづくりをしていくということは、そういう意味でもどうしても必要になってきているということで、大きく協働とか共助というのを掲げながら、今、させていただいておりまして、公共事業等でも原材料を支給して行っていただく分を増やしていくとか、あるいは行政運営の中に民間の住民の皆さんが入っていただいて行うとか、こういったことで行わせていただいているのですが、協働とか共助というのを民間の中で普遍した世界として支えあいとか、助けあいというのも出てくると思っております。
それからもう一つが、これは根本的な話で、都会であろうが田舎であろうがかかわらない話でございますけれども、少し本題から横にそれるのかもしれませんが、個人的な思いの部分があると思いますが、人間社会の基本的な有りようとして、人はやはり自分自身一人で当然生きていないわけで、生かされているというようなことに改めて気づいて自覚をして、そしてそういった自覚が社会全体の中に広がっていくってことがとても大切じゃないかと思っております。
生かされている、体ひとつをとってもそうですし、一日の生活、朝ご飯を食べる、その食材は自分でつくりましたか、他人様がつくっていただいたものですね。
排泄をする、その排泄したやつはどうしましたか、他人様に処理していただく。
みんな他人様との関係で社会がなりたっているということで、当然、支えあって、助けあってあるのがこの社会、人間社会の本質であるということをしっかりともう一度見つめ直す必要があるのではないかと思っておりまして、そういう意味で行政は、人間社会をより素晴らしい方向に引っ張っていったり、またお誘いしたりということの、ゆえにあるわけですから、そういう支えあいとか、助けあいというものを、しっかりと真正面に据えて、そしてそれを促していくようなことが大切だという思いの中で、そういういろんなことの中で、支えあい、助けあい、生かされあいということを言いながら行わせていただいているのですけれども、支えあいとか助けあいとかいうのは、言葉をかえれば裏腹に、他人様の命を生かしていくということが当然あるわけで、それは突き詰めていけば、確信には、生きること事態をお支えするというようなことがあると思います。
それは当然、自殺予防とか自殺対策に直結するわけでございまして、そういう意味で我々のまちづくりの大きな方針のところから、直ちに自殺対策は、直結して非常に重要な、最重要な一つとして位置づけながら、この間、行わせていただき始めたところでございます。
多重債務の話ですが、自殺のいろんな原因、これは健康上の問題もいろいろあると思いますし、ケースによってはいろんな原因がある中に、経済の問題、債務の問題、多重債務の問題というものがあるわけでございまして、我々として行政上関心を持ちながらこの間いさせていただいた訳ですが、昨年は政府、国のほうで対策基本法をおつくりになられるような流れがあるような中で、経緯に少し触れますけども、ちょうど昨年の夏前後、京都の弁護士会、当時浅岡会長をはじめ、関係者の皆さんがお越しになられて、そしておっしゃるに、「弁護士会として真剣に多重債務の問題に対して取り組みたい、また取り組んでいる。
自治体と連携をして、この問題についてしっかりとやっていきたい」ということで、各自治体を行脚しておられるようなことでございまして、本当に熱く真剣に語っておられました。
その中でおっしゃられたのが、今日シンポジウムに来ておられますけども、奄美市の例です。
奄美市の禧久様をはじめ、ご担当の方の例をお出しになられて、奄美市では正に多重債務問題に取り組む専門のお部屋を設けられて、そして専門のご担当を配置されて、そして弁護士さん、司法書士さんと一緒になって、いろんな整理の助けをなされておられる。
それにとどまらず、その方の生活のお立ち直りのために、福祉や教育やいろんな部署の皆さんと連携して軌道に乗るまでやるんだというお話をされておられて、本当にとっても感動いたしました。
すばらしいことをやっておられると、率直に感動した次第でございまして、その中でとりわけ感銘を受けたのは、今日お配りしている我々のパンフレットの中に、おめくりいただければ右側にお葉書が入っていますけれども、奄美でご相談を受けられた方からのお礼のお葉書ということで、そのときも弁護士会の浅岡さんに見せていただいたんですが、それを見て、本当に気持ちを込めて、その言葉を書いておられて、手紙を出されたということで、本当に感銘を受けて、こういうお仕事というのは公務員冥利に本当に尽きる、公に携わっているものの冥利をつくすようなそんなお仕事じゃないかと、とても感動した次第でございます。
我々のところも爪の垢(あか)をいただいて、まねをしていかないといかんと、早速、担当者に奄美に出張に行っていただいて、そしてご指導やご享受をいただいて、見よう見まねでこの4月から設置をさせていただいているところでございます。
我々のところの取り組みの一端を少しご紹介しますと、4月から11月15日までの間で151件の相談をいただいておりまして、市外からも17件きておられ、近隣市もありますし、遠く大阪の方から来ていただいたりしていただいたりしているのですが、当然、お困りになっている訳ですから排除はしないで相談を受けさせていただいております。
いろんな年齢層に分かれて、借入金の額もいろいろ分かれているみたいですけれども、結果として、現状約3割が任意整理、過払い請求をしている。そして約2割が個人再生や自己破産をさしていただいた。
約1割が悪質商法等の裁判に持ち込む、残りの3割も解決指導するということで、必ず解決に向けて踏み出しているというのが現状でございます。
担当の方から聞いているんですけれども、1例だけあげますと、ある男性会社員、30歳台の方、奥様とお子さん2人の4人世帯のかたですけども、消費者金融5社に未償還残高が約250万円ほどあり、毎月7万円強返していかないということですけども、返済に行きづまって自殺をしようと家を出られたということですが、広くお話を聞かせていただいて、弁護士さんとご相談をして、やはり利息制限法の上限金利を超えているものがあるということで、結局、この相談者の場合、200万円強の過払いが発生しているということで、過払いの請求をすることになったということです。
この相談者の方は、未償還残高がいくらになっているのか、そして毎月の返済額がいくらになるかと、たいへん心配されておられたわけですが、
「逆に返してもらえるとは思ってもみませんでした。
精神的にも楽になり、ほっとしました。
ありがとうございます」
と、お礼を言われました。
このご夫婦のような喜ばれる顔をみたときが、相談員としても何よりもうれしい気持ちになりますということを、担当の方から聞かせていただいておりますけども、本当に、率直によかったと思います。
弁護士会の皆様や司法書士会の皆様、また奄美市以外にも、野洲市、盛岡市、秋田県や長野県や岐阜県やいろんなところで、懸命におやりになられているということをお聞きするに、本当に敬意を深くする次第でございます。
他方で、多くの自治体の皆様が、問題意識を感じながらも、人員の問題とか、予算の問題とか、またご能力の問題とかを掲げて、今一歩踏み出せれずに、躊躇されているという話も聞かせていただくわけですけども、私はこういったことに公がかかわらないといけない事情というのは、いくつかあると思います。
技術的にいっても、ひとつは、一応これは借金をされるわけですから個人の責任の領域というのがあると思いますけども、だからといってほっといていいかというのが、当然あるわけですし、また公が接する硬い理屈を言えば、いわゆる違法な金利、違法な状態、ここからの脱却を勧めるわけですから、公がかかわってもいいんじゃないかという理屈もあると思いますし、またちょっとのことだとは思いますけども、それによって救われた方が、地元で消費する上での経済の問題なんかも掲げられる。
整理される理屈だと思いますけども、私はなぜ、行政がかかっていくのかというのは、一つ二つ、大きく根本的に思うところがございまして、まず一つは、多重債務の問題というのは、自殺という人の命にかかわる問題、また生活の根本にかかわる問題であると同時に、もちろん個人の責任の話はあると思うんですけれども、それだけでは済まない、社会的に追い詰められていくような事情というものがあると思います。
社会的に追い詰められていくのだったら、社会が逆にそれはお支えしないといけない、行政がお支えしないといけないということだというふうに思います。
世の専門家の方が、自殺は単一の原因でそうなるということではなく、多くの原因が総合的にからまって、そこへといたらしめるというようなことを、よくおっしゃっておられるのをお伺いしますけれども、多重債務の問題についてもそれ自体もちろんたいへんな問題なんですが、それと同時にそれから普遍された、それから発生する社会全体とのおかかわりの中で、その方があらゆる出口を、あらゆる希望を失ってそして自殺へと追い込まれてしまうというような構図というものがあると思うんです。
社会全体から多重債務もありますけども、それをきっかけとして社会全体から大きなマイナスの影響を受けながら追い込まれていくというようなことの中で、やはり行政が、社会がしっかりとお支えするということが、とても大切であると思っております。
それからもう一つ、根本的な話でありますけども、誰一人として見捨てない、どんな人も見捨てないという行政としてもっとも大切な本質にかかわる、直接、本質にかかわってくる問題ではないかと思っております。
もちろん行政は万能でもありませんし、また仮に万能であったとしても個人の責任があったときに、そこと一線をかくしていくそういう律を自ら持っていないといけないというのもよくわかります。だけど、公と私の律をしっかりと分けながら、維持しながら、他方で行政、公がやるべき事柄については、それはできる限りのことをしていかなければいけないと思っております。
仮に個人の領域、個人の責任の問題であったとしても、仮に他人様がお助けできない状況にあったとしても、行政は万能ではありませんけども、あらゆるできることを探っていく必要があるんじゃないかと思っております。
なぜなら、一番大きな力を、公共の力を与えられているのが行政であります。
一番大きな力を市民の皆さん、住民の皆さんから信託を受けて与えられているというのが、行政であるわけでございまして、そういう大きな力を持つものが一番か弱くなっている命、存在をしっかりと支えていくことが大切じゃないかと思っております。
絶対誰一人として見捨てない。
そんな中で、社会全員プレーでやっていくということが、とても大切ではないかと思っております。
そういった大きな力を授けていただいているものが、小さなか弱くなっている存在をお支えする、そんな中に個人の救済の問題もありますし、同時にそれが社会の真の活力を生んでいくということが、絶対あると思います。
大きな与えられた力、公共の力、それが一番謙虚になって、一番か細くなっている存在をしっかりと支えていく、それがあって初めて社会全体がまるくなっていく輪ができるというふうに思います。
これは、家庭の中でもそうだと思うのです。
親御さんが一番できの悪い子どもを大切にして、しっかりと愛情を注いでいく。
そうすることによって家庭全体が一層円満になるっていうことがあるのだと思いますし、また学校でも、いじめっ子とガキ大将、この違いは何かというと、いじめっ子は弱い人をいじめる、だけどガキ大将は強きをくじいて、弱きを助ける。
こういうことの中に、一種の敬いとか、また安寧というものが生まれてくるのじゃないかと思います。
いろんなクラブ活動をしてても、1年上の先輩は恐いですけども、もう1年上の3年生、これも恐いですけども懐深くて、やさしい面もある、特に1年生に対しては。
そういうチームは強いですね。
2年も3年も恐いばかりだと、ばらばらになってしまうけども、一番上の3年生が1年生の面倒をちゃんとみるような、そういうチームはとても強いと思いますし、また社会の組織、やはりトップのリーダーシップというのはとても必要だと思いますけども、同時に現場に立って、現場の皆様とともに思いを共有して、一体感を持ってやっていくということの中に、組織としての躍動感とか、機動力というものが出てくるんだと思います。
そういう意味で、本当に大きな力を与えて、委ねていただいているものが、一番小さなか弱くなられている命をしっかりと支えていくということがとても大切だと、切り捨てられる、見捨てられるということはあってはいけないと思っております。
そういう輪ができないと、ひずみができて、ひずみがひずみを呼んでしまうということもあると思います。
社会の真の活性化を図っていくうえでは、そういうことが大前提にあるのではないかと思っております。
根っこがゆがめば、その上にどんなまちづくりを乗っけても、そのまちづくりは空虚な空疎なものになってしまうのじゃないでしょうか。
行政は、あらゆる人の幸福とか福祉の増進をめざして行われるわけでございまして、その上でこういった取り組みが個人の救済や、福祉の増進につながるとともに、社会全体の真の活性化につながっていくというふうに思っております。
この多重債務問題の取り組みというのは、本当に命の福祉だと思います。
命の福祉であると同時に、社会の発展の命脈、命運に影響を大きく与える取り組みでもあるのじゃないかと感じております。
我々のところもまだ4月からやり始めたところで、試行錯誤も重ねながら、本当にすばらしい担当者とすばらしい弁護士先生に恵まれて行わせていただいておりますけども、またすばらしい皆様のような関係者の皆さんにご指導をいただきながらさせていただいておりますけども、今後とも、皆様からご指導をいただいて、本当に真の社会の活性化につながるような、一層、まだまだ、こういう私も思いだけで具体的な行動はまだまだぜんぜんできておりませんですけど、いろんな方のご指導をいただきながら、やらんといかんなというふうに思っておるところでございます。
奄美市や野洲市をはじめ、いろんなところのすばらしいお取り組みが広く全国に広がっていきますことを心から祈念申し上げまして、ご報告とさせていただきます。
皆様、今日はありがとうございました。
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